幽霊が徘徊する家
2019/09/01
当時私は小学校5年生で母子家庭として育てられました。
その時代は母子家庭というと母子寮などの家に住む人が多かったのですが、母は変にプライドが高くて母子寮に住む事を避けていたように思います。
その時は秋田県の横手市という場所で母と2人賃貸のアパートに住んでいましたが家賃が高めで苦しい生活をしていました。
そんな時に母の友達のつてで、増田町という田舎に古いけど大きくて立派な民家が格安で借りられるからどうだろうと声がかかり、なんの迷いもなく引越しを決めました。
その家は2階建てで、前の住人が畳屋さんだったようで1階には大きな倉庫がありました。
倉庫には前の住人が残していった畳や色々な荷物が置いてあったのを覚えています。
1階は大きな畳の部屋が3つと台所が1つありました。
台所の奥には細長い廊下があり、お風呂やトイレがあったのですが、その更に奥に小さな物置小屋があって薄暗い場所だったので「ちょっと怖いな」と感じていました。
2階には3つの部屋があったのですが、1階も2階も全て和室だと思っていたのに2階の奥の1部屋だけが洋室で違和感を感じました。
それでも以前の小さなアパートから古いとは言ってもこんなに大きな家に住めるという事で当時小学生だった私はワクワクした気持ちでいました。
しかし、その古い大きな家は夜になると幽霊が徘徊する恐ろしい家だったんです。
その存在を初めて感じたのは母でした。
夕方に母が台所で夕食を作っていた時の話です。
背後から異様な視線のようなものを感じてゾワゾワっとして振り向こうとしたようなんですが、その直後に背中側のシャツを思いっきり誰かに引っ張られるような感覚があったと言うんです。
その話を聞いて私は怖くなりました。
でも、この話はこれで終わりません。
当時は私も小学生だったので1階の寝室で母と2人で一緒に寝ていました。
その日、母は何となく目が覚めてしまって布団の中で眠くなるのを待っていたそうです。
その時、台所の奥にある細長い廊下から人の足音が聞こえてきたと言うんです。
その足音を聞いて何故だか母は「これは男の人だ。生きている人間じゃないな」と感じたそうです。
その足音は細長い廊下から寝室の前を通り、畳や前に住んでいた人が置いていった物がある倉庫へと消えていったと言います。
それからも毎日のように夜になると男の足音が聞こえていたそうですが、私にはその存在を感じとる事は無く、それ程怖いとは思っていませんでした。あの出来事が起こるまでは。
引っ越してきて3年、私も中学生になりさすがに母と同じ部屋で寝る事に抵抗を感じるようになり、2階の1部屋だけ洋室だった場所を自分の部屋として使うようになっていたんです。
そんなある日、私はいつものように自分の部屋で寝ていたのですが、階段から誰かが上がってくる気配を感じて目が覚めました。
ザザっザザっと壁をこする音、ギシギシと階段を上がってくる足音を聞いて、母が言っていた男だと感じました。
それは壁を擦りながら私の部屋に近づいてきました。
怖くなって布団に潜り込んでいると、それはギーっと音を立ててドアを開け部屋まで入ってきました。
ずっと覗き込まれているような異様な感じがしばらく続いていましたが、いつの間にか私も眠ってしまって気づいたら朝を迎えていました。
それ以降も足音を何度か聞いた事はありましたが、部屋に入ってきたのは1回だけでした。
現在はその家を引越しして別の場所に住んでいますが、今でもあの大きな古い家があるのか、まだ夜な夜な男は家の中を徘徊しているのか分かりません。
今考えても恐ろしい体験でした。