山梨県の国道沿いドライブイン廃墟で女性の顔が……
2019/09/01
山梨県の国道沿いに、今では廃墟になっているドライブインがある。
そこでは昔から妙な噂が絶えない。
そんな所に肝試しに行こうという話になり、あまり気乗りしなかったが、その時付き合っていた彼女が行きたいというので、渋々行く事になった。
当日は雨こそ降っていなかったが、星一つないどんよりとした曇り空で、湿度が高くジメジメしていて、肝試しにはもってこいだった。
参加者は自分を含めて4人の2カップル、ハンドルを握ったのは、車好きの自分の彼女だった。
現地は山道の中で、人家や街灯も少なく、他の車ともほとんどすれ違わなかった。
ドライブインの駐車場は閉鎖されて以降はフェンスで囲まれていたので、そばの空き地に車を置くと懐中電灯を片手に、暗い敷地の中へと入っていった。
その敷地は結構広く、小さな公園位はあった。
肝試しの目的は、中にある施設のトイレの鏡の前で写真を撮る事である。
そうすることで霊が写るという噂があった。
暗い中をしばらく歩いていると、側の茂みの中で、ガサガサという音が聞こえた。
みんな一瞬たじろいだが、その後動きがなかったので、犬か何かだと思うようにして、目的の施設のトイレに入っていった。
中はゴミが散乱するなどで、荒れ放題であった。
トイレは見つかったが、肝心な鏡が無い。
全て割られてしまったようだ。
仕方ないのでそこで写真を撮ると、帰途に着く事にした。
すると先程と同じ茂みの中、前よりもはっきりとガサガサと音が響き、黒い影が足元に飛び出してきた。
毛むくじゃらの犬?
いやそんなものではなかった。
長い毛は生えていたが、それは犬や猫ではなく、なんと女性の首から上だった。
それがまるで蜘蛛の足でも生やしたみたいに、ガサガサと地面を移動していたのである。
「キャーッ!!」真っ先に悲鳴をあげたのは、自分の彼女だった。
その声が引き金になり、全員が我先に駆け出した。
ガサガサという音が、後から追ってきたように感じたが、振り返る余裕もなく、全員が慌てて車に乗り込んだ。彼女はエンジンをかけ、急発進でそこを後にした。
「とにかく街まで行こう。」自分のその一言以外、しばらく口を開く者は無かった。
そして、道がカーブの多い山道の下りに差し掛かった時、 ハンドルを握っていた彼女の様子が急変した。
身体を前後に小刻みにゆすり始め、何やら訳の分からない事を口走る。
どう見ても正気ではない。
運転は荒くなり、アクセルをさらに踏み込もうとしていた。
後ろに座ってる二人は、なすすべなく呆然としている。
助手席の自分は、命の危険を感じ、慌てて止めに入ったのだが、尋常では無い力で弾き返される。
一瞬彼女の顔に、先程見た女の首の顔が重なって見えたように思えた。
速度は増し、標識は間もなく急カーブに差し掛かると告げていて、このままでは確実に事故になる状況である。
もはやここまでと思った瞬間、ブチンと大きな音がした。
彼女の左腕に付けていた、黒水晶のパワーストーンブレスが弾け飛んだ音だった。
と同時に彼女の力が抜けていくのが見て分かった。
どうやら、石が災いを取り除いてくれたようだった。
その後は、どう帰ったか、あまり覚えていない。
ただ、彼女とは、それ以降何故か相性が合わなくなり、別れることになった。