ルームミラーに映った「何か」
2019/10/09
私の地元には心霊スポットとして有名なトンネルがある。
数年前、心霊スポットが苦手な友達の「たかちゃん」をドライブに行こうと誘って半ば強引にそのトンネルへ行きました。
そのトンネルは昔、カップルが焼身自殺をしたとされるトンネルで、様々な霊が出ると噂が絶えない。
実際に自分の友人もそのトンネルへ行って、一度も子供を乗せていないのに車の窓に中から着けられた子供の手跡がついていたそうな。
しかし自分にはあまり霊感がないのか、何度かトンネルへ行ってはいるものの、心霊体験の様なものに遭遇したことはなかった。
「どうせまた今度も何もないだろう」
そう思ってまたそのトンネルへ行ってしまった。
自分の友達が心霊スポットを嫌がる理由は「何かを見てしまうから」という理由だったが、何度も心霊スポット巡りをしている自分からすればなにかの見間違いとしか思えなかった。
何度もそのトンネルへ行っている自分からすれば、心霊スポットを巡る楽しさよりも、心霊スポットに連れてこられて嫌がる友達のリアクションが見たかっただけ。
そして道中、カラオケへ行こうと連れ出したのに、カラオケどころか民家すらほぼなくなるような山道。
「これ絶対だまされたよね?」
友達も流石に気が付きだす。
しかしここまで来てしまったらせっかくだし行くしかないと囃し立て一行は目的地のトンネルへ。
心霊スポット巡りと言えば夏。
しかし夏と言えども山は夜になると夏を忘れるほどに涼しくなる。
またその涼しさが妙な雰囲気を作り出し、より一層怖さを引き立てていました。
そして僕たちは現場に到着。
トンネルの付近は街灯すらもなく、車のライトを消せば一面闇に包まれるようなところ。
いよいよそのトンネルを通る。
トンネルの全長は300mほど。走れと言われると滅入るような距離だが、車なので大したことはない。
何か起こるかもしれない、しかしあんなにワクワクしていた瞬間は数分で終わってしまった。
何もなく、心霊スポットに遊びに来ただけの事実が車の中に楽しい空気をもたらした。
無理やり連れてこられた運転手の「たかちゃん」も今回は何事もなく安心しているようだ。
そんな帰りの山道、このまま本当にカラオケでも行こうかと街へと車を走らせるが突然他愛もない会話の途中、たかちゃんが無言になり、ルームミラーを見ていた。
たかちゃんはルームミラーを見つめたまま、ハンドルを握り、アクセルを踏み込む。
「たかちゃんどうしたん!?」
自分たちが呼びかけても、彼はルームミラーから目を離さない、応答もしない。
山道の迫りくるカーブ、一切応答しないたかちゃん。
このままでは谷底に落ちてしまうと思い、助手席からハンドルを握る自分。後部座席から必死に呼びかける友達。
数秒後にたかちゃんはフッと我に返った。
何があったのかという自分たちの問いに対してたかちゃんは
「いや・・・何も見てないよ」
その後、なにを聞いても、どういう聞き方をしても「何も見ていない」との返答しかなかった。
流石に自分たちも怖くなり、カラオケへは行かずにそれぞれの自宅へ帰ることにしたのだが、結局たかちゃんはルームミラーで何を見たのか教えてくれることはなかった。