旧日見トンネルで消えた妹
2019/09/05
もう思い出すだけで動悸がして泣きそうになるのですが、心霊スポットは遊ぶ場所ではないと知らされました。
お盆休みに長崎県の父の実家に遊びに行き、久しぶりに親戚が集まって花火で盛り上がっていたところ、いとこに心霊スポットに行こうと誘われたのです。
いつもなら絶対断っているところですが、私は久しぶりにお酒を飲んでほろ酔いでした。
すぐに誘いに乗って、妹といとこ兄弟の4人で、長崎の定番心霊スポット「旧日見トンネル」に向かいました。
旧日見トンネルでは昔、交通事故で悲惨な亡くなり方をした女性の霊が現れることで有名です。
近くに車を止めて、4人で「出てきたらどうする?」「えっめっちゃ怖いやん!」と、異様な雰囲気のトンネルにハイなテンションでわちゃわちゃ。
お盆休みで定番の心霊スポットだから何人か来てそうだよね、と話していたのですが、22時で車も全く通らず、まるで4人だけしか存在しない異世界みたいで怖くて酔いが醒めてきました。
トンネルの入り口まで歩いてきたものの、数秒前まで騒いでたのに、暗くて冷たい空気に圧倒され、4人とも怖気づいて足が固まってしまいました。
怖くて前に進めないものだと思ってたのですが、4人して動かなくなるなんて、多分ご先祖様が「帰りなさい」と止めてくれてたのかもしれません。
「とりあえず行ってみよ!」と言ういとこ2人についていくことにしましたが、ここからがもう地獄でした。
「やば。絶対出るやん!」「こーわっ!」と怖さを紛らわせるように騒ぎながら歩き始めて、トンネルの4分の1まで着たところ、なんと私の前を歩いていた妹がいつの間にか消えていたんです。
それはもうパニックになりました。
今まで私の前を歩いていたのに一瞬で消えていたんです。
まさか1人でトンネルの先まで行くわけないし、3人で引き返して妹の名前を叫びながら入り口に戻りましたが、やっぱり妹はいませんでした。
半泣き状態で3人で話し合った結果、またトンネルに入って、先まで歩いて妹がいなかったら警察に電話することに。
さっきとは比べ物にならないくらい、今度は3人して早歩きで、妹の名前を叫びながら出口に向かって歩き始めました。
トンネルの4分の3くらいまで来たところ、急にいとこが「待て。」と私と弟を止めました。
すると、後ろから「サー…バンッ!サー…バンッ!」と、片足を引きずりながら歩くような音が聞こえ始め、徐々にペースが速くなる音に焦って私たちは泣きながら全力疾走で出口まで走りました。
出口に近づくにつれて音は聞こえなくなりましたが、それはもう不規則で不気味な音で、絶対に誰かが追いかけてきてる音でした。
そして出口にたどり着くと、なんと妹が私たちの声を聞いて駆けつけてきたんです!
何が起こったのか、妹は髪の毛が乱れていて、涙と鼻水で顔がベトベトしていました。
「どこにいたの⁉ずっと呼んでたのに!」と私が泣きながら怒ると、「誰かに凄いスピードで髪の毛を引っ張られながら出口まで連れてこられた!私もずっと叫んでたのに~!」と号泣しながら言われたんです。
トンネル内には私たちしかいないのに、妹の叫び声は全く聞こえませんでした。
妹は横に回転しながら引きずられたらしく、手の甲とふくらはぎに擦り傷ができていました。
私たちと一緒に行動をしているとき、妹は誰かに急に髪の毛を掴まれて引きずられたのに、誰も気づかなかったんです。
トンネルの4分の1から出口まで5秒くらいだったらしく、このトンネルには私たち以外に誰かがいるのは確かでした。
妹の「ずっと呼んでたのに誰も気づいてくれなかった」という話に、まるで違う空間にいたように感じました。
さすがにトンネルを引き返す勇気はなく、家族に電話をしても家から1時間以上かかります。
本当に申し訳ないのですが、タクシーを呼んで、車を止めているところまで乗せてもらいました。
タクシーの運転手のおじいさんに「ご先祖様が帰ってきてるのにバチ当たるぞ!」と怒られ、家に帰って電話で事情を知らせてた家族にも正座をさせられ、翌日お坊さんにお祓いをしてもらいました。
そして1週間後、なんといとこ兄弟が同じ日に事故で怪我をしてしまったんです。
2人とも軽傷だと聞いて安心しましたが、2人して同じ日に事故にあうなんて、絶対にトンネルの件が関係してると思います。
心霊スポットの怪奇現象にはなにか原因があるはずだと今まで思ってきましたが、あの異様な空気は体験した人にしか理解できません。
絶対にそこに見えてはいけないものがいて、それはもう言葉にできないんです。
本当に妹が見つかってよかった。
もう二度と心霊スポットには行きません。