こねこ、挨拶のかたち
2018/12/14
うちにはいつも猫がいました。
のら猫を飼うこともあれば、もらったりすることもあり、猫が複数いることはありますが、いなかったことはありません。
ある日、うちの敷地の端っこの草むらから子猫の声がします。
そのあたりを探してみると、まだ小さい猫がいました。
目は開いていて歩けますがひとりで生きていけるレベルではありません。
親猫が迎えに来るかと、すこし様子を見ていましたがその気配はなく、猫もなくのでうちに入れることにしました。
うちには、もともと飼っている猫がいて、その猫とうまくやっていけなければ飼うことはできなかったので、2匹を引き合わせました。
もともとの猫は静かに見下ろしていましたが、小さい猫は恐怖からかかなり威嚇してしまい、もともとの猫はカプッと小さい猫の首元をかみました。
すぐ離したし傷もないようでしたが、小さい猫はくってりして動きませんでした。
まだすごく温かかったのであきらめられずしばらく両手で包んで泣きながらあれこれ後悔していたら、5分~10分くらい経って突然「ミャー」となき、動き出しました。
怖すぎて気絶?
すごくほっとしてどっと気が抜けました。
取り返しのつかないことにならなくて本当によかった。
そんなこともあり、うちでは飼えなくなったのですが、もらい手を探す間、しばらくうちに置くことになりました。
2階の一部屋をもともとの猫が入らないようにして、2週間ほどそこにおきました。
そこは寝室だったので、寝ているとよく猫が足元からたてに、だだっと体を踏んでいきます。
猫は小さいし布団があるとうっかり踏まないかと心配でしたが、同時にかわいくもあり、しばらく楽しく付き合っていました。
そうこうするうち、もらってくれるという友人がいたので、ちょっと寒い梅雨のある日、その友人のうちに小さい猫を連れて行きました。
それからしばらくしたある日の夜、寝室で寝ていたはずなのですが、ふっと右のほうから何かが近づいてくるような気配を感じました。
普通に寝ているし、上を向いて目は閉じたままでいるのですが、部屋の端から顔のほうに何かが近づいてくるのを感じます。
自然に近づいてくる感じで、こわいという感じはまったくなく、動こうという気もまったく起こりません。
それはだんだん近づいて顔の横まで来ると、頬にふわっというまだらな細い毛の感触がありました。「あ、ねこ。」そう思った瞬間。
「むにっ」と顔を小さい足が顔を踏みました。
「踏まれたっ」と思っている間に小さな足はむにむにと顔の上を横断していき、今度は反対の頬にふわっという感覚があり、左のほうにまっすぐ離れていきました。
朝起きてると特に変わったところもないので、「夢にしてはなかなか感触がリアルな夢だったな」くらいでそのまますごしていました。
それから数日経って、学校の廊下で猫をもらってくれた友人に会いました。
友人の顔が少しこわばっていて、なんだかいやな予感がしました。もしかして・・・。
話しづらそうに話し出した友人によると、小さい猫は梅雨の寒さのせいか、ホームシックか、だんだん元気がなくなっていったそうで、数日前に死んでしまったそうなのです。
よくきいてみるとちょうど私が踏まれたあたりの日でした。
友人はとてもすまないと何回も謝りました。
私は友人に「たぶん、うちに挨拶にきたよ。」と先日の夜にあったことを話して、二人で少し泣きました。
ほんの短いあいだ触れ合った猫ですが、思い出深い猫になりました。
とってもかわいいやつでした。
いまでもあのふわっとした毛と、踏まれた感触を思い出します。
思い出すと、いまでもちょっと泣きます。