女子高生にもらったフリスビーが……
2019/09/01
今やどんどん背が伸び、男っぽくなってきた息子ですが、当然、幼いころっていう期間が存在していました。
それは今から6、7年ほど前のことだったと記憶しています。
私は平日の昼下がり、家からちょっと離れたところにある大きな公園に息子を連れて来ていました。
遊具ばかりが揃えられたスペースのほか、小川とちょっとした草原のような広場もあり、息子はそこでひとり駆け回っていたんです。
平日ではありますが、同じように小さい子供を連れたお母さんとか、ちらほらと遊んでいる人の姿もありました。
そのなかに、おそらく学校の帰りとおぼしい女子高校生がふたり、フリスビーやシャボン玉で遊んでいるのを、なんとなく私は横目で見ていました。
そんな遊びは、息子も大好きでした。
そして息子はまた、本当にまったく人見知りというものをしない子で、ちょっとでも興味をひくものがあると、すぐによそのご家族にでもまぎれていってしまい、迷子になったことが度々あったくらいです。
案の定、息子は彼女たちのもとに引き寄せられるように近づいていきました。
親の欲目かもしれませんが、息子はかなり顔立ちの整っている部類です。
幼いころは本当に、外を歩いていると色んな人が振り向いて「あの子可愛いね!」って言ってくれていたのを、自慢げに思い出せます。
ふたりの女子高生はひょっこり入って来た息子に「きゃー、可愛い!」って言ってくれ、一緒に遊んでくれようとしました。
私は「ごめんなさい」と息子を引き止めに入りましたが、彼女たちは「いいですよ。一緒に遊びましょ」と歓迎ムードで、とってもありがたかったです。
しばらく遊んでくれた後、彼女たちはもう帰宅する様子でした。
私に「よかったら子どもさんと写真を撮らせてください」とケータイ(たしかまだスマホではなかったと思います)を差し出すので、3人の記念写真を私が撮影しました。
最後に「これ、そこの100均で買ったんですけれど、よかったらもらってください」と、いままで遊んでいたフリスビーとシャボン玉セットを息子にくれました。
さて、私の自宅の話になりますが、当時は息子用に部屋を用意してはありましたが、まだ小さい息子はひとりで寝ることはしようとせず、私たちの寝室にて、一緒に寝ていました。
部屋はなかばおもちゃなどの荷物置き場となっていました。
廊下を出て隣の部屋にはパソコンを置いてある部屋があり、なにか作業するときよくこもっていました。
あの日は秋の涼しい夜でした。
のどが渇いた私は台所に水を飲みに行き、なんとなく眠気がないものでそのままパソコンの部屋に行きました。
少し肌寒さを感じたものの、何かを羽織るのも面倒くさく、ぼんやりとネットをしていたんです。
廊下の明かりは点けておらず、ドアも開けっ放しでした。
パソコンは、部屋と廊下を隔てた壁側を向いていて、つまり私の座るイスからは、開いたドアより廊下が見えるのです。
もちろん、私の視線はパソコンのモニターに向いていました。
向いていたんです……が、廊下からポコン、と音がして、視界のすみになにか不思議な色のものが映りました。
改めて見てみると、ショッキングピンクのフリスビーでした。
フリスビーが隣の息子の部屋からポーンと出て来て、廊下の壁にポコンとぶつかり落ちたんです。
なぜ? 息子は寝室でなんの異状もなくすやすやと寝息を立てていました。
隣の部屋は無人で、真っ暗です。
もちろん窓も開けていません。
公園で遊んでくれた高校帰りの女の子たちがくれたそのフリスビーが、この部屋のどこにしまっておいたか、残念ながらその記憶ははっきりしません。
でも、どこにしまっていたにしろ、夜中にひとりでにポーンと飛んで出てくる合理的な理由が、私にはどうしても見つけられないのです。
あれから息子には特に変事はありませんでした。せいぜい3年ほど前に自転車で転倒した程度です。
あの気のいいふたりの女子高生たちの身に、なにも悪いことが起きていないのを祈るのみです。