霊現象が起こる寮
2019/09/01
私が就職した会社には社員寮があり、その寮での話です。
一室が2Kで、中の部屋を二人で分けて使用するタイプの寮でした。
その日は休日だったので部屋でゆっくり過ごしていました。
少し眠くなったため仮眠を取ろうとベッドに横になっていたら急に金縛りにあいました。
金縛りにあったことは初めてではなかったので、そんなに慌てるようなことはなかったのですが、突然、ベッドの枕の下から鬼の手のような化け物の手のようなゴツゴツとした手が出てきて、私の目の前で両手をクロスしました。
何だろうと思う間もなく、私の首元にクロスしたままの手がかかり、首を絞めてきました。突然のことに慌ててしまい、身動きもとれず息苦しさと恐怖で意識を失いかけて死を意識したその瞬間、ふっとその手が消えました。
あまりの恐怖に自分の部屋に居ることができず、隣にいた同期の部屋へ駆け込みました。
事情を説明し、私の部屋を見てきてくれたのですが異常はなく、恐怖心はあったのですが同期の部屋に居ることもできなかったため部屋へ戻ることにしました。
部屋へ帰ってもう一度ベッドの確認をし、鏡で首元も確認をしましたが何もなかったので、環境が変わったせいで悪夢を見たということにして忘れることにしました。
実際にその日から数カ月は何もなく平穏な生活ができていました。
その恐怖体験を忘れそうになっていたある日、また睡眠中に金縛りにあいました。
あの時の恐怖が蘇ったのですが、身動きが取れないだけで何もなく、何も出て来なかったので日々の疲れのせいだと思い、気にも留めませんでした。
でも、その日から金縛りが起こる頻度が多くなり、ゆっくり睡眠がとれないせいで疲労が溜まっていきました。
就業していた仕事は時間が朝早かったり、夜中に終わったりと不規則なシフトだったため、睡眠不足から仕事にも支障が出てきて、見かねた同期が気分転換も兼ねて、部屋を交換してくれました。
隣へ移っただけだったのですが、引っ越し後、しばらくは安眠の日々が続きました。
様子が変わったのはある夜でした。
その日は翌日が休みで、時間を気にせずに寝ていられると思い、携帯のアラームも切って寝ていました。
ふっと目が覚めたのが夜中の2時、隣の同期は明日も仕事だったため、寝ているはずでした。
でも、部屋の外、キッチンの方の明かりはついており、お風呂かお手洗いに行くために電灯を付けたのかと思ったその瞬間、いつもの金縛りが襲ってきました。
「ああ、まただ…」と思い、金縛りが解けるのを待っていると、その日はいつもと違ってなかなか解けず、急な寒気と言い知れない恐怖も襲ってきたのです。
すると、部屋のドアから誰かが入ってくる気配がしました。
隣の同期が入ってきたのかと思い、助けを求めようとしたところ、「○○駅(当時住んでいた地名)はどこですか?」と尋ねられました。
中年の男性の声でした。
金縛りにあっている恐怖と、いるはずのない人の声が聞こえたことの恐怖とで何も発することができず、ただ様子を伺うことしかできませんでした。
すると、「無視をするな」と低い男性の声が聞こえたかと思うと、部屋の奥の壁へすっと消えていきました。
その後、恐怖からゆっくり眠ることもできなくなり、部屋の明かりとテレビを付けて恐怖を紛らわせました。
翌日、ぐったりとしながら起床し、テレビの朝のニュースを見たとき再度恐怖に襲われました。
昨夜現れた男性に尋ねられた駅近くで、自殺した男性の遺体が見つかったというニュースが流れていたのです。
昨夜現れた人がその方だったのではと思うと今も恐怖で身が縮む思いがします。