毎日同じ女の夢を見る「みえる友達」
2019/09/01
私が専門学校に通いながら東京で一人暮らしをしていた頃のことです。
学校の同じ科の女の子で、昔からいろいろ「みえる」子が一人いました。
その子は、友達が次に付き合う人の人物像を当てて見せたり、その子自身が不思議な体験をした話をときどきしていたので、みんなぼんやりと本当に見えるんだろうなぁと思って接していました。
ある日、女の子同士で学校の帰りにカフェでのんびりおしゃべりしていたのですが、そのみえる子がどうやら寝不足のようでちょっと辛そうにしていました。
「眠そうだね?」と言うと、その子は最近よく見る夢の話をし始めました。
「ほとんど毎日のように同じ場所の同じ展開の夢を見るの。夢には地元で暮らしてる弟も出てくるんだけど、なんかすごいリアルな夢なんだよね。夢の中で自分が起きてるのか寝てるのかときどきわからなくなるんだ。それがすごく怖いの。この夢は見ちゃいけない夢なんだって感じがする。それに、毎回同じ女の人が出てくるんだよね」
その時その話を聞いていたのは、私と、みえる子と、他に二人の友人でした。
みんな夢の話を聞いただけでかなり不気味だと感じていました。
その夢はまだ続いているのか気になって聞いてみると、昨日は見なかったと言います。
「ずーっと同じ夢ばっかり見ててすごく疲れてたんだけど、やっとどうしたらいいかわかったの。たぶん毎回出てくる女の人をどうにかすればいいって。っていうか、ほんとはわかってたんだけど追い払っていいのかわからなかったんだよね。本当はその人動物だから」
そう言ってその子は何気なく隣に座る私のほうに顔を向けました。
私は彼女の顔を見たとたん全身に鳥肌が立ちました。
確かに彼女の顔ではあるけれど、いつもの顔ではない、明らかに異様な人相に見えたのです。
目が細く吊り上がり、口の端がひきつったように細くなっていて、肌も青白く見えました。
私は(これは夢に出てきた女の顔だ!)と思いました。
同時に、その女がなんの動物の化身なのかもわかりました。
白蛇です。
鳥肌はすぐに収まりました。
みえる子も何事もなかったように話を続け、とりあえず連続で見ていた悪夢の件はうまく収まりそうだ、ということで不気味がるあとの二人を安心させていました。
ですが、私は内心あの異様な顔に誰も気が付いていないのか?とどきどきしていました。
しばらくして、私とみえる子を席に残してあとの二人がトイレに行きました。
二人きりになるタイミングを狙っていたのか、みえる子が私の方に顔を向け話かけてきました。
もういつもの彼女の顔でした。
「さっきなんか見たでしょ?」
彼女は私のぎょっとした一瞬の表情に気が付いていたようです。
私が白蛇の顔を見た、と話すとやっぱりな~と言っていました。
「●●(私の名前)は気づいてないかもしれないけど、たぶん霊感あると思うよ。意識すればみえるようになるかんじ。私ずっと思ってたもん、あ、この子みえるなって」
私はその時まで、まさか自分に霊感のようなものがあるとは思っていませんでした。
これまで不思議な体験は何度かしてきましたが、すべて気のせいで済ませていました。
私と一緒にいる仲間たちにとっては、私も「みえる友達」だったのです。
気が付いてしまうと他のことまで真実味を帯びてきて、気のせいで済ませることができなくなってしまいました。
これが今までで一番ゾッとした出来事です。