大好きな原宿を守る不思議なロリータ美少女
2019/09/01
私は30代中盤の男性です。
今はもう止めてしまったのですが、少し前まで、パンクやゴシックをファッションとして嗜んでいました。
ネットのSNSを通じてロリータファッションをしている子と仲良くなり、「お茶会」に行ったりしていました。
今回お話するのは、その中で体験した、今思い返しても不思議なお話です。
それは、もう8年も前の頃のことになります。
まだまだ「ゴシック男子」として駆け出しだった私は、週末になると、服やアクセサリーを求めて原宿に出かけるようになっていました。
私の家は神奈川の湘南のほうなので、原宿までは湘南新宿ラインと山手線を使って一時間と少しです。
また当時は、ゴシック・ロリィタ自体がマイナーだったので、某大手匿名掲示板での単発のオフ会を募るスレッドで個々にそういった趣味の子(男女問わず)と会って遊んだりしていました。
だいたい、春の終わりくらいの季節だったと思います。
その幽霊? に出会ったのは……
竹下通りは皆さんご存知でしょうか?
平日もそうですが、週末になると人混みのすごいストリートですよね。
個性の強い服装をした若者でごった返し、歩くのも「牛歩」状態で非常に時間がかかります。
人によっては前を遮られる形となり、イライラしたりストレスを覚える人もいるのではないでしょうか。
しかし、しかしですよ……
その「ロリータさん」は明らかにおかしかったんです。
JR原宿駅から横断歩道を渡った竹下通りの入り口の十字路、ここは竹下通りの中でも恐ろしいほどに人の往来が激しいところです。
その日、いつもの服探しと店漁りに来て竹下通りに入った私が目にしたのは、竹下通りの入り口ほどなく入ったところにぽつん、とひとり立っていた「ロリータさん」だったのです。
その子は、本当に西洋人形のような、まるで化粧というより蝋を塗ったような、ちょっと小柄で綺麗なロングの黒髪を持った、若い頃の栗山千明に似た完璧なルックスの美少女でした。
服装は、「下妻物語」の世界観をそのまま表したような、見事なまでの全身真っ白なコテコテのロリータファッション・コーデ。
そして不思議なことに、その少女は竹下通りのど真ん中に堂々と立っていて、誰もが、まるで彼女に全く気付いていないかのように、みんながみんな器用に彼女のそばを、す、と横切って通っていくのです!
この通りは真ん中が最も混むので、もうその時点で不自然です。
何かの撮影かな? と思い周囲を見渡してみたのですが、いくら周りを観てもカメラマンや撮影機材などは全く見あたりません。
何かのロケだったりしても、スタッフのような人すらいません。
そして、誰にも見られず気づかれず(これほどの完璧な美少女が週末に街の真ん中にいたなら、誰かしら見たり注目するはず!)、堂々とまっすぐに竹下通りのど真ん中に立つロリータ少女……
彼女を私が見ていたのは30秒くらいの間でしたが、見事に誰もぶつかったりしなかったし、誰も話し掛けもしませんでした。
彼女は微笑を浮かべたまま、ずっと静かに立っていました……
結局真相はわからないままですが、今になって思い返しても、やはり不自然で、不思議な体験です。
そして思いました。
「あの子、幽霊だったんじゃないか?」と。
今でも同じように思っています。
でも私にとって救いだったのは、その子が幽霊として、恨めし気にではなく、とても幸せそうにそこに立っていたことです。
きっと、生前の彼女はロリータなどの変わったファッションを受け入れてくれる原宿が大好きだったのでしょう。
今でも彼女は、可憐なロリータに身を包み、大好きな原宿を守ってくれているのかもしれません。