クワガタ獲りにいった山で……
私は九州の田舎に住んでいまして職業は自営業、建築関係の業種になります。
経営者は父、それに兄と私の3人で細々と仕事しています。
自営業という事もありまして仕事が入らない時期なんかは結構、自由に出来る時間もありそんな時には魚つりに行ったり夏はクワガタを獲りに行ったり他に色々と暇潰しをしています。
それでは本題に入らせて頂きます。
今から約5~6年前にニュースでも取り上げられ大変な話題にもなりましたオオクワガ、大きさによりけりですが一匹が130万円と、とんでもない値段で販売され、またそれを買う方がいて私はニュースを見てビックリしていました。
私の住んでいる近辺には山も海もあり小さい頃は良くカブト虫やクワガタ獲りに行っていたもんです。
このニュースを見て私は、「よし、自分でオオクワを獲りに行こう」と思ったのでした。
それでニュースの話を兄にして一緒にクワガタ獲りに行くようになったのです。
仕事がら工具類は沢山ありましたのでそれを腰ベルトに装着しまして(針金、蚊取り線香、ノミ、カナズチ、のこギリ)などです。
後は虫除けに雨ガッパを着用他、マムシという毒蛇がいるので噛まれてもいいように長靴を履きます。
最初の頃は仕事が入っていない時の昼の時間に山に入っていました。
しかしそれでは、オオクワガタはなかなか捕れなくて、6~7センチ程のヒラタクワガタの捕獲しかできませんでした。
それでも、木の穴に入っているクワガタを針金を使って取り出した時なんかはその満足感に浸って、とても楽しい気分になっていました。
こうやって段々とクワガタ獲りにのめり込んで行くうちに夜の山にも入るようになって行ったのです。
行ける時は毎晩のように近辺の山に入って、くぬぎの木を探してはクワガタを捕獲……
正直、最初に山に入った時はめちゃくちゃ怖かったです(笑)
懐中電灯の光が届かないところは闇で光が照らし出す範囲は一面の林、聞こえる音は虫の鳴き声に葉っぱの上を歩く足音で凄く不気味な感じです。
しかし、そんな中でも狙ったポイントの木にクワガタを発見し捕獲できると、さっきまで怖かった事なんか不思議と忘れてしまい、楽しい気分でルンルンになっている兄と自分がいました。
こんな事を続けている内に夜の山にも慣れてしまい、怖さは全く感じないようにもなっていたのです。
ある時、兄に、今夜も行く? と尋ねると今夜は親父の代わりに大工さんと打ち合わせを兼ねた食事会に出席するので無理だと言われました。
この頃の自分はクワガタ獲りの醍醐味にのめり込んでしまっていて山に入りたくて仕方ない状態です。
なので今夜は一人で山に入る事にしました。
いざ、夜の山に一人で入ってみるとやはり不気味に感じました。
いつもは兄がいるので心強く怖くないのに……
でも毎晩に近いくらい山に入っていたので一人でもギリギリ許容範囲といったところでしょうか。
いつものポイントを3箇所だけまわって急いで帰ろうと思いました。
ちなみに車を停めた場所からポイントまでは20~30分山の中を奥へと入って行きます。
それで最初のポイントのくぬぎの木に辿りついたのです。
説明していませんでしたがこの木の前には獣道を挟んで草むらに5~6メートル入ったところに古い崩れかけた空家がありましてポイントのくぬぎの木からも草木が邪魔はしているものの昼間でしたらはっきり見える距離です。
ちなみに、私は小学生の頃からこの空家を見て知っていました。
話は戻りまして、一発目のポイントに着き少しの高さだけ木に登り樹液が出て来ている穴のチェックをしていたら、なんか凄く背中側にある廃家が気になって、と同時に鳥肌も立ちとてつもない怖さに襲われ、はっきり分からないのですが視線的か気配のようなものを間違いなく感じたのです。
この時はまだ振り返って廃屋を見たわけではありませんがめちゃくちゃ怖かったのを思い出します。
私はそれまで幽霊とかも見た事もないし、霊感というような物ももっていませんし信じてもいませんでした。
それから、どうしても気になり廃屋の方に目をやると白くボーッとした人の形がありました。
顔とかはわかりません。
前向きか後ろ向きかもわかりませんでした。
ぶっちゃけ、怖くて一瞬見ただけてす。
その後は大声でワァー!! と叫んで走り出し、大急ぎで車まで戻りました。
それが、自分の今までで一番怖かった思い出です。
その後は山に入るのは止めました。
ちなみに後で分かったのですが九州地方の山にオオクワガタは生息していないとの事でした。