座敷わらしと生活しています
5年前の話です。
私は、まだ幼い子供2人と昼寝をしていました。
すると突然、意識はあるのに身体が全く動かなくなりました。
それは、初めての金縛りでした。
私が怖くて目を瞑っていると、布団の周りを子供達がバタバタ走り周ってる足音が聞こえてきました。
私は自分の子供が起きてバタバタ走り周ってるものだと思い、動かない身体のまましばらく様子を伺っていました。
すると突然、子供のズボンの裾が頬に当たりました。
瞬間、足のつま先から頭のてっぺんまで鳥肌がゾゾーっとして、ハッ! と起き上がると、私の両脇で子供達はスヤスヤ寝ていました。
じゃあ今のは誰?
夏場だったので、子供達のズボンは半ズボンでした。
ですので、頬に当たる筈なんてありません。
それに、頬に当たったズボンの感じが、着物のような、昔の戦時中のボンタンのような、そんな感じだったのは、今でも覚えています。
それからというもの、夜中サンルームで子供の足音が聞こえたり、私が寝ていると布団をかけてくれたり、朝携帯のアラームが鳴っていると手首をつかんで携帯まで置いてくれたり、といったことが起こりました。
最初はビックリして、その度に冷や汗をかいたりしてました。
が、最近は慣れてしまい、また近くにいるんだー、と思い生活していました。
そしてある晩。
寝ようと布団に横になったら、枕の下から「ありがとう」と子供の声が聞こえてきました。
これには流石に跳び起きてしまい、その日は怖くて寝れませんでした。
しばらく経って座敷わらしの事も忘れて生活していました。
足音も聞こえないし、やっと落ち着いて生活出来るとさえ思っていました。
いつの間にか私は、座敷わらしに何も感謝しなくなったのです。
座敷わらしはいると良いと言われ、家を守ってくれたりする、と耳にします。
なのに、私は感謝の気持ちを忘れ。座敷わらしを邪険にしていたのです。
そうして、足音の聞こえない生活を送っていると、次々と家に不幸や急な出費が増えました。
中でも一番辛かったのは私の入院です。
今まで一度も入院した事も無く健康だったのですが、夜中ジワジワと腰から足にかけて痛みが走り、最初は明日の朝一番に医者に行こうと思っていたのですが、段々息をするのがやっとなくらい痛みが酷くなってきて、ついには我慢できなくなり、やっとの思いで旦那を起こして救急車で病院に行きました。
その時、朦朧とする意識の中で目の端に小さい女の子が泣いているのを見かけました。
古い着物をきた女の子です。
こんな所に何で?
と思いましたがそれどころじゃ無いので気にも止めていませんでした。
点滴が終わり病院を見渡すと女の子がいた所は窓の外でした。
その時もしかしてと頭によぎりした。
そのまま入院になり不安な夜を毎日過ごしていたら、夜中決まった時間に廊下を走る子供の足音が聞こえるんです。
毎日毎日怖くて寝れないので、睡眠薬を出してもらい、なんとか眠っていましたが、足音がすると目が覚めてしまい、部屋の前で止まる足音に、常に恐怖を覚えていました。
たまに、今日は聞こえないと安心していると、部屋の隅から泣き声が聞こえてきたりすることもありました。
そんな時は、布団を被り必死に目を閉じました。
泣き声を聞いていると、小さい声で「忘れないで、忘れないで」と繰り返し言っていました。
その声を聴いた私は、感謝の気持ちをわすれ、座敷わらしが居なくなって良かったと思っていた自分を恨みました。
心の中で「ごめんね、ごめんね、もぅ、忘れないから。いつもありがとう」と何回も言いました。
気がつくと声は聞こえなくなりそれからは足音も聞こえなくなりました。
そして手術も無事終わり退院して自宅に帰ると、座敷わらしのお陰でいつも元気に暮らしていたんだと実感しました。
それからは毎朝毎晩、「今日も宜しくお願い致します」、「今日はありがとうございました」と心の中で言うようになりました。